病気と長く付き合わなくてはいけない患者さんと向き合う時、「治そう」という考えだけでは、どうにもなりません。私が逃げ出さずにやってこれたのは、約40年前に出会った「ネガティブケイパビリティ(負の能力)」という言葉に支えられたからです
どうにも答えの出ない事態に直面した時に、性急に解決を求めず、不確実さや不思議さの中で宙づりの状態でいることに耐えられる能力、を意味する言葉です
もとは19世紀の英国の詩人キーツが、詩人が対象に深く入り込むのに必要な能力として使った言葉でした
ネガティブケイパビリティによる処方を、私は「目薬・日薬・口薬」と言います。
「あなたの苦しみは私が見ています」という目薬
「なんとかしているうち、なんとかなる」という日薬
「めげないで」と声をかけ続ける口薬
患者さんは難しい状態にあっても、なんとかこれでやり過ごせます
作家・精神科医 帚木 蓬生