小さな記事(記者のひとこと)

感染者急増、医療逼迫、緊急事態宣言・・。コロナ禍で様々な言葉が飛び交うなか、窮状に直面する一人一人の顔は隠れています。

四月上旬に刊行された雨宮処凛「コロナ禍、貧困の記録」(かもがわ出版)は支援窓口などについての具体的な助言を交えつつ、災禍に揺らぐ個々の人生と向き合った大切な一冊です。

「自分が手を放してしまったらこの人は命を失ってしまうのではないか。そんな想像力をすべての人が持てば、救われる人は大勢いる」。15年にわたり貧困問題を追い、自ら支援活動を続けてきた筆者の警句は、重みをいや増しています。

この国は、私たちは、これまで何を見捨ててきたのか。万人に脅威が降りかかるいま、同書が発する問いを、真剣に考える必要があります。(山本悠理)