違う(どこからか言葉が 谷川俊太郎)

違う

小さな
水色の

小さな黄色の
花が
春先の庭の
雑草の緑の中に
点々と
咲いている

去年の春も咲いていたのだろうが
目をとめなかった
今もそれを
じっくり観察はしない
もう小学生ではないのだから

ウクライナと呼ばれる地方にも
きっと小さな花は咲いている
それに目をとめる心と体のゆとりは
誰にもないとしても

巨大で複雑に絡み合う世界に
私たちは圧倒されているが
そのほとんどを言語と映像で知っているに過ぎない
私の目の前で咲いている小さな花は
違う