当院では、技工(お口の中の詰め物や入れ歯など・・)は外注ですが、開業して30年もになりますとほぼ内部技工・・と言うより、阿吽の呼吸のそれ以上の存在でもあります。お願いする際、外交の方や作る本人に詳細話したり模型見て打ち合わせしますが、作る彼らに聞いてみると「頂いた顎模型見れば先生の方針もお考えもすぐわかり、患者さんとよく話した結果だなぁとわかりますので」と言って下さるので、本当に良いスタッフに恵まれているなぁと思います。

先日あった小さな事ですが、グッときたことがあるのでお話しします。

身内の患者ですが、お口の状況が急に変化し、残存歯の未来像もちょっと?みたいな、でもテンポラリーの入れ歯(義歯)作らなくては噛めないし・・、噛み合わせも狂っちゃうし・・で長年やって下さってる入れ歯担当の技工士に相談しました。そうそうその患者さんは、型とるのが苦手ですぐ「オエーッ」となるのでと。

「難題ばかりですがやってみましょう。時間をください・・」と待つこと〇〇週間。出来上がったもの見てびっくり。見ただけで「気をつかって作って下さったんだなぁ」ということが、細部にわたって見て取れます。
お礼を言いながら「ご苦労だったでしょう?」というと、「いえ、入れ歯・義歯とは簡単に言うけれど、リハビリテーションです。できる限りお気持ちに添えるかやってみました。こちらも実験のつもりで」と。

そして、「お手間ですが、口に入れる前に、あっためて頂くように。例えばきれいにして洗浄液から出してゆすいだ後、”手のひらで包んであっためる”だけでもいいので」と伝えて下さいと。エッ!入れ歯(義歯)はお口の中で使います。お口の中というのは湿ってあたたかいのです。ですから細菌が居心地いいわけです。さらに飲食で冷たいもの・温かいものが出入りするので、口の中の詰め物・入れ歯は温度変化を受けるのです。いわゆる収縮したり伸びたりを繰り返しています。この事も様々な不都合の原因になります。

という訳で洗浄液から出していきなり口の中に入れ歯を入れたら、それだけ入れ歯の素材に衝撃がある!(特に薄い入れ歯など)とのご心配から、掌(手のひら)であっためるだけでもいいからと助言下さったんでしょう。

つくった技工士さんの気持ち・心意気そしてデリケートなお気遣いを感じて「大事に使っていただきたい」という気持ちをお伝えする役目をひしひしと感じました。

患者さんは入れ歯を入れる時って、けっこう急いでいるときもあるかも知れませんし、嫌な言葉かもしれませんがお口の「リハビリテーション」と思ってみると、その扱いをより丁寧にしてみたら、よりごきげんに長く良好に使えるのかもしれません。

技工士の彼が言いました。
パラリンピックが随分皆様に伝わるようになりましたが、義足のプロの方(プロフェッショナルなどに出られた)ご存知ですか?ヒールの義足が履きたいという要望に応えたりして、すごい人なんですよ。尊敬していますと。

何気に毎日お世話になっていた技工士の哲学に触れて、あ~なんていいスタッフにお世話になっているんだろうとチームメンバーに感謝の気持ちになりました。
もちろんいくら技工士に気持ちがあっても、叶わない症例もあります。
でも、行き交う気持ちが、つくり手と使う人の間にあったら、きっとうまくいくのではないでしょうか?

日野原先生がいつも仰っていた「手当」というあたたかい大切な言葉を思い出しておりました。そしてチームメンバーが「仁」の心を持つことの意味を反芻しました。
このようなメンバーに支えられて本年も無事に診療を終えさせていただけそうです。