抗菌薬に気をつけて

最近また言われ始めていることですが、以前は有効だった抗菌薬(抗生物質)が効かない「薬剤耐性菌」によって、2019年に世界で127万人が死亡した、そんな推計を米ワシントン大などの国際グループが発表し、この耐性菌による死者は50年に年1千万人になるとの推測は、想定より速くその数字に近づいていると警鐘ならしているそうです。薬剤耐性の問題に取り組む国立国際医療研究センター病院AMRリファレンスセンターの都築慎也医長は、この世界規模の分析の存在感は大きいと評価しています。

細菌は、抗菌薬に対抗する遺伝子を別の種類の細菌からもらったり、じぶんの遺伝子が変化したりして、耐性菌になります。抗菌薬を乱用するほどこうした機会は増えます。耐性菌を減らすには、必要のない時に、抗菌薬を使わないことが重要です。

特に大きな問題は、かぜの人に出される抗菌薬で、風邪の原因はウイルスだから抗菌薬は効かないうえ、下痢や嘔吐と言った副作用が起きることもあります。前記のAMRリファレンスセンターのグループ調査によると、2012年4月から17年6月、かぜやのどの痛み、鼻づまりなどの急性気道感染症で外来受診した3割に、抗菌薬が出されていました。過去の調査よりは減りつつありますが、改善の余地はまだ大きい実情のようです。AMRの都築さんは、「かぜに抗菌薬は効かないといった感染症に対する知識を深めることが、対策の推進につながる」と話しています。

一方、医師が必要があると判断して抗菌薬を処方した場合は、よく話をきいて、自分で薬の量を増減したりしない様にとも注意を促しています。すべからく医療者と患者さんの「十分なコミュニケーション」が望まれます。

また余った薬をほかの人にあげたりするのも禁物です。注意深く使い、乱用は避けましょう。不安な時は、薬局の薬剤師さんなども気軽に相談にのってくれます。最近ポリファーマシー(多剤投与)も問題になっていますので、身近に相談できる薬剤師さんを探しておくことも、いざと言う時とても助かります。