電車で

休日電車に乗ったら、3歳くらいの男の子がママとタブレットで遊んでいました。いっときのことかと思ったら、その内ママが居眠り始め、その隣の男性がパパと分かり、パパもママも眠り始めました。

でも小さな男の子は、タブレットを一人でいじくってるまま・・。

私の小さい頃と比較しても何にもならないかもしれないけれど、もったいないなぁと思いました。私達のころは、こんなに魅力的なITグッズなかったので、電車に乗ったら窓から外を見たくて、靴を脱いだㇼ、靴を入れる袋を親が持ったり・・と忙しかったものです。それも外を見ると魅力的だったからで、動くもの見るもの、風にそよぐ木の葉や、舞い上がる埃や紙くずすら面白かったものです。又空を見るだけで楽しかったですね、季節によって空の模様が違ったりして。

タブレットに夢中になって、口も利かない小さなお子さんを見て、なんだかもったいないなぁ~と心から思いましたよ。ましてやパパパとママが一緒で、会話も出来るでしょうに。「見てみて、面白いよ!」「あの雲、葉っぱの形してるね・・」そんな会話がきけそうな情景なのに・・。今ではそれより面白いものが身近にあるんですね。でもやっぱりもったいないなぁ!この時間。

皆さんご存じのピアニストの辻井伸行さん。お目が不自由ですけれどバンクライバーン・ピアノコンクールで一位になって以来、そのご活躍はめざましいものです。優勝するまではお母様が杖となっていらしたものの、独り立ちすると同時に他の方をお傍につけて、お母様は引かれました。これもみごとなご決断と拍手を送ったものです。

そのお母様が「小さい頃どうやって育てられたか?」とよく質問されるとそれに答えてらっしゃいました。「息子は目が不自由なので、景色も何も見えません。ですけれど積極的に森や海岸やあらゆるところに連れ出して、「今ね、こういう鳥が木の枝から飛び立ってね、だからカサッと葉っぱの音がしたのよ。今いるところは川のほとりで、春のね、あったかな陽ざしの下で、川の水がサラサラ流れているのよ。キラキラ光ってもいるわ・・」と実況中継しながら空気のにおい・風のにおい・川の水を手に触れさせたりして・・と説明されました。彼は目は見えないものの、元アナウンサーのお母様の実況中継により、音や空気やにおいなどから想像して、心でご覧になっていたのですね。

類まれなピア二ストは、このような「ご家族との日々の気配を感じる日常から感性がお育ちになった・・」と深く強く思ったことでした。

電車でたまたま見かけた幼児が、タブレット見ていてもどうこう言うつもりはないのですが、小さい頃って感受性も豊かなので、せめてものに頼らず「面白いね、不思議だね、なんでだろ、いい匂いするね、きれいだね・・」そんな風にみたり聞いたりのやり取りの中から、一つ又一つと言葉も感情も育ってってくれたら・・と思ってしまいました。
小さい頃の真綿のような吸収力は、五感の刺激を待ってるんじゃないでしょうか?
そんなことを思った、電車での一コマでした.

 

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