「ゆるキャラ」「マイブーム」の言葉を作り、今度は「アウト老」という新しい概念を生み出したみうらじゅんさん。伊藤若冲や超絶技巧のブームを牽引し、自身の集大成となる「日本美術の鉱脈展」を開いた山下裕二さん。正当ならざるものに価値を見出し。世に送り出した二人の語り合いです
山下・この鉱脈展はね。こんなすごいものがあるっていう内容。呼び物も必要だから、去年見つかった伊藤若冲・円山応挙の合作屏風を展示してるけど、一番の推しは牧島如鳩の「魚籃観音像」。キリスト教と仏教がごちゃ混ぜになってる。この展覧会、みうらさんが言ってる「ボク宝」のコンセプトなんですよ。見た人が自分の目で未来の国宝をさがしてってつもりで企画しました
みうら・自分で価値があると思ってるんだったらいいけど、みんな言われたことを信じすぎてますよね
山下・僕は30代ぐらいになって国宝重文という価値づけのウソくささに気付いて赤瀬川さんと仕事をするようになったり、国が決めた価値なんかぶっ飛ばしてやるっていって岡本太郎に深い入りしたり。いいと思ったものが結果的に国宝や重要文化財だったらいいけど、やっぱり自分の目で見てということなんですよ
でも、「アウト老」になると、知っていたこともどうでもよくなったり忘れたりするようになりますよね。
アウト老は、老いに対する固定観念にとらわれない生き方です
みうら・若い頃から早くお爺さんになりたかった。還暦過ぎてようやく兆候が出始め「待ってました」とばかりに、さらに盛って「老けづくり」をはじめたんです
なんで年取ったらネガティブにならなきゃなんないの?って思いますよね。キープオンバカでいたいです。僕が高校時代に聴いていたロックは基本が反逆だったので、一見まともなものに対して反発覚えちゃうんですよ
山下・それが、無い仕事を作る姿勢に通じるんでしょ
みうら・無いから作るしかなかったんです。ゆるキャラなんてネーミングしても、さもその世界があるように自分をだましてそれで物を集めめるとか書くとか。いつもそういうやり口です
山下・軽々とジャンルを作って、世間が消費したらすっとまた次に行く
みうら・ブームってそもそも誤解じゃない?万が一ブームになると僕は飽きちゃうんです(笑)
山下・今の若い子は、ゆるキャラって言葉みうらさんが作ったことすら知らないと思います
みゆら・誰が作ったって言ってる段階では、本当のブームとは呼べませんもんね。ま、こっちもはやらそうなんて気はもとよりありませんし
・お二人は「ブームの仕掛け人」「プロデューサー」などとアピールしたいとは思わないんですか?
山下・自己承認欲求でやってるわけじゃなくて、こんないいもんがあるって知ってほしいという「他己承認」
。「タコ上人」みたいでいいじゃない。日本美術界では、超絶技巧ってキーワードもすごく流行ってるけど別に「僕が作った」という気はない。でもなにかやるにはネーミングってすごい重要
みうら・世の中が大ざっぱに捉えていることって、よくよく見ると実は細分化してるんですよね。その細かいところが重要で、面白かったりするんですけど、そこのネーミングがないんですよ。でもネーミングされると途端にあるような気がしますから。まずはそれで自分を洗脳する
山下・価値の転換があるなぁ
みうら・国宝じゃなくボク宝ですから。全ては
山下・自己承認欲求と言えば、みうらさんよく自分探しじゃなくて「自分なくし」って言ってますよね
みうら・自分なくしは、すなわち「撲滅運動」。僕を出来る限り滅して、仕事を引き立たせる。ボクの部分がうざいんですよね。せっかく内容が面白くても「あいつが言ってるから見ない」なんて言われちゃ台無しじゃないですか
みなさま メリー・クリスマス!
