「何で勉強しないといけないの?」

子供からそう聞かれて困った人もいるのではないでしょうか?
瀬戸内寂聴さんのお話しです。寂聴さんは人を愛するため、想像力を養うためにも勉強は大切だと語ります。

心を直さぬ学問して何の詮かある   頴尊上人

そもそも学問は何のためにするのか・・。
以下寂聴さんは言います・・

私の考えを先に言いますと、どんなにつまらなくても小中学校で履修する科目は、しっかり勉強した方がいい。国語、算数などの入試科目だけでなく、音楽も美術も体育もそうです。
「勉強しないと、心が栄養失調になる」からですと。

勉強は食事と同じです。私達人間が健康でいるためには。いろいろな栄養を取る必要があります。美味しいからとイチゴやアイスクリームばかり食べていたら、栄養失調で病気になります。肉や魚、ほうれん草やニンジン・・。いろんな食材で栄養を平均的に取ることで健康になり、立派に成長します。
それと同じように、心もいろいろな栄養を取らないと、心の栄養失調になります。子供の頃は自分は何が好きなのかわかっていませんが、学校で教えてくれることはすべて栄養だと思ってください。

では、人間が心の栄養失調になるとどうなると思いますか?
想像力が乏しくなります。
想像力がないと、自分の将来の夢を思い浮かべられない。夢の為に頑張る気持ちも湧いてこない。何をしたら友達が喜ぶのか、逆に傷つくのかもわからない。
想像力=愛ですから、人を愛することも出来ません・・と。

想像力がないと、善悪正邪の判断がつきませんから、よいこと、正しいことのために闘うことも出来ません。さらに悲しいことには、自分が幸せなのか不幸なのかさえ、判断がつかなくなるのです。

ろくに勉強をしないで心の栄養失調のまま大きくなった人は、自分が心の栄養失調であることに気づく事すらできないのだと。

仏教では、今から約2600年前のお釈迦様の時代からずっと、人間に知恵を持てと教え続けているのだそうです。最初に掲げた叡尊上人の言葉も、現代風に言うなら「知識ばかり丸暗記する学問が何の役に立つのか?それよりも心を正しくするために、心の栄養となる勉強をしなさい」そう呼んではどうだろうか・・かと。

コロナ禍自粛でもう一年以上、若いお母さん方から”少しは勉強しなさい”と叱ると、”何で勉強ししなくちゃならないの?”と居直ったような口答えをされて困ってるという相談の手紙が、寂聴さんに多いそうです。
親の思いをよそに、子供達にはゲームに漫画、スマホ・・今は限りなく面白いものがあるのです。「寂聴さんが”子供のうちにしっかり勉強して、心の栄養をたっぷり取っておきなさい”と言ってるよ」と話してあげて下さいと。

はたして子供たちが心の栄養わかってくれるかどうか・・。でも世界中には勉強したくとも学校さえ、教科書さえ手に出来ない子供もいます。スポンジのように吸い上げてくれる子供たちに、勉強もまた楽しい!と伝わるようにしないといけませんね。それに私達大人が先ずは想像力豊かで寛容で魅力的な大人でありたいと、つくづく思ったことでした。

そう言えば先日、日頃介護の仕事で忙しい方が、本を読みたいのですがなかなか本を読む時間が無くて、子供が寝てから本は読むことにしています・・でもなかなか時間取れなくてとおっしゃいました。又子供もなかなか本を読まないんですよ・・とも。そこで私、つい「お母さんが先に、子供の前で本を読まれたらどうですか?「今日はお母さん、どうしてもこの本読みたいの・・」と。そうしたらその方「子供が寝てから・・とばかり思ってました。そうですね、私が本を読んだら、一緒に子供達も読むかもですね・・」と。素直に仰る方を応援したくなりました。