歯周病専門医・中山吉成先生と対談

院長・奥冨史郎 歯科衛生士・齊藤ゆみ(2012年10月13日)

~道具にプロ魂が宿る~

司会
中山先生、本日は今年で4回目になります実習セミナーに来ていただき、ありがとうございます。スタッフの軽快なシャープニングの音をBGMに対談をスタートさせていただきますが、先生のセミナーはシャープニングからスタートされるのはどのような意味からでしょうか?
中山先生
「道具が、治療できる道具でないと、治療効果がない」と気づいたからです。料理にしても鋏にしても、刃がついていないと物が切れない、切ろうと思っても変な形に切れてはいけないので、キュレットも歯石を取る器具も、根面を傷つけずに汚れが取れる状態になっていないと、技術があっても治療効果を上げることはできないことに気付き、器具の手入れを先に教えることにしました。
司会
ということは道具次第で効果に大きな差がつくと言うことでしょうか?
中山先生
私はそう思っています。実際にやってみてどうですか?齋藤さん。
齊藤
今まではスケーラー自体どういうものか?どのように砥いでどこに使うか?特長も意味も理解不足で、歯石をただ取ることしか頭になく、器具自体をどのように修正してどのように使うか、性質・特長を考えていませんでした。一つ一つに意味がある事を中山先生に教えていただき、ただスケーラーを使うのでなく、使いやすいように、根面を傷付けないようにすることの意味がわかりました。
包丁や職人さんの鋏と一緒ということは、私達衛生士の仕事もシェフと同じようにプロの仕事だとあらためて認識いたします。
中山先生
細かいところに気を配り「形を再現する技術が必要な歯科医にとっても手用の器具の研磨が大事」と同時に申し上げたいと思います。

~変化をみのがさないための5番探針~

司会
先生の実習で次に驚くのが歯石の探知ということですが、それについて教えて下さい。
中山先生
歯周病の進行は、根面に汚れがつきプラーク・バイオフィルムとなり、細菌の死骸が歯石化してシェルターを形成することが要因のひとつです。
それを除去するのが歯周病治療の大きな目的です。どこにどのくらい不潔物がついているか、歯本来の形はどうなのか?どうきれいにするか?5番の探針でよく探り、解剖の知識を生かし状況を頭に描いてどうきれいにするべきか、患者さんが歯石を取る瞬間にわかるようにすれば、患者さん本人がキレイになったかどうか識別できるのです。患者さんの感覚はすごいものですよ。きちんと探知を行いシャープニングされた器具で処置すれば、根面がキレイになり、歯茎が引き締まり、患者さんが納得し喜ばれます。
奥富
1998年に酒田の熊谷崇先生に初めてお目にかかった時、むし歯も歯周病も本来稀な病気、バイオフィルムの破壊と除去が何より有効とおっしゃっていて、衝撃を受けたことを思い出します。
中山先生
そうですね。熊谷先生は誰より早くその大事なことを日本に広く伝えた方だと思います。
司会
そうしますと、歯石を探知して、的確に除去するという衛生士さんの技術のアップはどうしたら宜しいでしょうか?日々患者さんを前にしての繰り返しでしょうか?
中山先生
そうですね。ただ独り相撲でなく日々患者さんを前に、患者さんと協力して治療していくには、まず毎日毎日のホームケアの仕方を、患者さんの手の届かないところもできるようになるまで、手取り足取りお教えします。
さらに衛生士はセラピストとして、毎日の効果的なお手入れを「面倒だけどやっていこう」患者さんのモチベーションを高めるのが仕事です。
このようにして、自分の健康は自分で守れると気づいた患者さんとペアになって進めることが大事です。
奥富
素晴らしいお話ですね。当院でも今年初めに朝礼で「患者さんの気持ちをどう支えるか」が課題とスタッフから提案があり、いつも心がけております。

~患者さんの気づきが衛生士を成長させる~

司会
中山先生に実践セミナーをお願いして4年目になりましたが、当院の衛生士がどう変化し、患者さんの反応はどうなったか。院長先生、いかがですか?
奥富
よく頑張っていますよ。やればやるだけ成果が上がり、腕も上がってきていると思います。
ただ、スケーラーをたくさん使うので、シャープニングが追いつかないと言うのが現状です。衛生士が患者さんのお力を拝借して技術のアップに試行錯誤しているのがよくわかります。
何事もトライ&エラーの繰り返し。患者さんに感謝して確実なものにしていってほしいです。焦らず、患者さん方もきっとご理解くださっているので、手を抜かず頑張ってください。衛生士の頑張りもあって、患者さんご自身がメンテナンスを継続する成果を、実感と言いますか、ご自覚が出てきたと感じています。今まで治らなかったものが治ってきた、つまり、ブヨブヨしていた歯茎が引き締まってきた。よく腫れていたのに腫れなくなった、動いていた歯が動かなくなった、気になっていた口臭が改善し、息が爽やかになった、前よりよく噛めるようになった。こんな声が患者さんから出てくると、こちらも嬉しくなりますね。抜歯と思っていた歯が動かなくなってくることもあり、地道な衛生士の仕事の意味を感じています。
何が良くて何がまずいか、何が足りなくどうすれば最善か、お一人お一人を見ながら、中山先生がおっしゃるように、患者さんをパートナーとして一緒に考え、少しでも快適にできる提案と選択をして差し上げたいですね。
齊藤
実際、歯茎の中のこと、見えないところで何かが起こり何が原因になっているか、当院の長年の患者さんは最近ではとてもよくおわかりです。初めていらした患者さんは、すぐには理解いただけないかもしれませんが、気になっていたところが少しずつ快適になってくる実感があれば、徐々にでも、お口の中はお手入れ次第でよくなり、歯科医院は健康維持のために利用するところだということがお分かりいただけると思います。
衛生士学校では、衛生士の仕事がどういうものか学んではきましたが、実際の仕事を十分理解していなかったので、資格があっても大変不安でした。学校ではとりあえず歯石を取ればいいだけだという認識でしたし、「それでいいのか、このままでいいのか」と、先が見えずにいました。そのような時に中山先生にご指導いただくチャンスに恵まれたのです。
5番の探針のことを知らず、まずそれを使った歯石の探知を教えていただいて、これだ!と思いました。また、患者さんをパートナーとして歯石を取っていくことを中山先生に教えていただき、患者さんも、わかるんだ、一緒になってやることができるんだと実感なさると患者さんのモチベーションも上がり、仕事が大変やり易くやりがいも出てきました。
奥富
中山先生に教えていただいてから更に、中央歯科における衛生士の役割は、患者さんに喜ばれ、本当に大切な仕事として実感することができて、やりがいを感じると思います。

~あこがれの仕事にしよう~

司会
日本では衛生士がアシスタントワークに明けくれ、また、スキルアップのチャンスもなく、価値ある本来の仕事につけずにいる方も多いと聞きますが。
中山先生
アメリカに比べ、日本では健康保険制度の縛りがあり、衛生士の仕事に制約ができてしまい、衛生士本来の仕事=患者さんと一緒に治療していくということが求められていない、できない現状です。アメリカでは衛生士が経営的にも予防歯科を支えながら、人々の健康に寄与し喜ばれています。
奥富
この夏学会で、海外の歯科医の評価の高さ、選ばれた存在であるために日々研鑽している状況などを伺いました。保険制度など社会の基盤が違うとはいえ、日本ではあこがれの「目標とされる」職業でなくなってしまっているのは残念なことです。
歯科医も歯科衛生士も人々のQOLに貢献できる仕事ですので、これから先も社会から求められる重要な仕事だと認識しています。専門知識とスキルを磨くだけでなく、患者さんとパートナーとして共に健康維持に携わっていける、やりがいある仕事です。
司会
中山先生に歯石を取っていただくと、体が揺れるほどストロークの大きさを感じますが、やっていただく側は実にリラックスして快適です。実際力を入れているのですか?抜いているのですか?
中山先生
野球・ゴルフと同じで緩急を自分でコントロールしています。そして器具を上手に使えば歯面に傷つけることなく、また患者さんに痛みを与えず、喜んでいただけます。そうすると次回も安心して、気分的にも身体的にもリラックスしてメンテナンスに通うよい習慣に繋がっていきます。
齊藤
最近は歯石を取っていると、患者さんから「ここにもあるので取ってください」と自らおっしゃる方もあります。気づいてくださるのでそこをどうやって取って差し上げたら、苦痛なくキレイになったと感じていただけるかな?と考えるようになりました。
患者さんと一緒になって衛生士の仕事ができることを幸せに思いますし、今まで中央歯科で活躍された先輩方がコミュニケーションをよくとってくださっていたおかげと思います。
奥富
「一」教えていただいたら自分で「三」にし「五」にして確実に自分の技術として、更に将来にわたり衛生士として仕事ができるように力をつけてほしいと思います。まだまだ患者さんから得ることがたくさんありますので心を寄せて聞いてください。
中山先生
中央歯科に伺って皆さんにお会いするたび、考えも技術も進み、私もいろいろ気づかせていただきます。患者さんの喜びを分かち合えるように今後もコミュニケーションを十分取ってください。
奥富
以前日吉歯科診療所の衛生士さんが、自分の担当患者を「絶対歯周外科にはしない、衛生士として自分のできることでなんとかして差し上げたい」と言うのを聞いて、そのプロ意識に驚き、だからこそちゃんと患者さんがついて来ているのだと思いました。
中山先生
プロフェッショナルで素晴らしいですね
最近は特に歯周病と全身との関連性が高いことが常識になってきました。マスコミを通じて患者さん方も高い認識をもっています。この点をふまえて衛生士も体のこと、病気・お薬のこと、歯茎との関連を念頭に置いて話せば、患者さんの見る目も変わります。時としてその日の予定していた処置をする事が望ましくない場合もあり、衛生士が患者さんのコンディションに気がつく技量をもつことも信頼につながります。
奥富
30年前「歯も大切なからだの一部です」を掲げて開業し、歯医者が何を言っているのだろうとビックリされましたが、今では「本当にそうですね」と当院の患者さんはご理解くださいます。これからも中山先生に教えていただきながら、パートナーである患者さんと共に、皆さまの快適な日々に貢献していきたいと思います。
齊藤
今日は実習後、お疲れのところ大変参考になるお話をありがとうございました。明日の実習も楽しみです。