「記憶にない」ことこそ記憶

福岡伸一先生によるお話。

「記憶にない」とはどういうことなのか?
まず「記憶」とはどこにあるのか?脳の中のホルダーにミクロなファイルが蓄積されているのだろうか?答えはNO。記憶は物質ではないのだそうです。

記憶は物質でなく、脳細胞と脳細胞の”あいだ”にある。
シナップスで連結されてできた脳細胞の回路に電気が通るたびに「生成」されるのが「記憶」だそうです。

昨夜飲んだ後、どのように帰ったか思い出せない。こんな時は前後の状況を結ぶ回路はあるのに、真ん中の線に電気がうまく通らないのだそうです。「記憶にない」ことは、実は前後の記憶があるからこそ認識できることで、欠落を取り囲む周辺があって初めて欠落とわかるのです。

ですので、「記憶にない」のは、記憶があってしかるべきなのに、うまく思い出せない・・という、一種の二日酔い状態であることを告白してるに過ぎないそうです。
あるいは、実は記憶にあることを、うそにならないよう言い繕うときに使うための見え透いた方便でしかないそうです。

全く身に覚えのないことなら、端的に「やっていません」「言ってません」といえば済むことだと述べておられます。
最近のニュースや新聞見ると、言い繕っている人がたくさんいるようですね。
とてもタイムリーな福岡先生のコラムでした。