言葉と別品の国

 

広告を通し、軽妙且つ鋭い視点で世相を切り取ってきた天野祐吉さんが亡くなって一年。

数々の残された言葉が未だ多くの人を引き付けてやまないようです。天野さんといえばい

つも言葉が「生活者の視点」であったことを強く思い出します。言い古されたことですが

「男はアタマでしか考えられない欠陥動物なんですね。専門的な目でしか、モノが見えな

くなっちゃうんですね」とブレーキかけてらっしゃいました。生活者の目線で・・天野さ

んの場合はうたい文句でなく、常に私達の心にしっかり届くものでした。最近アナウン

サーの言葉もスーッと目の前を通りすぎるような言葉ばかりで、それを「ことばが”から

だ”を失っていく」と天野さんは表現されました。もっと匂いのある言葉。温度のある言

葉。表情のある言葉。「世界で一位とか二位とか、何かにつけてそんな順位を競い合う野

暮な国より、戦争も原発もない”別品”の国がいい。道をすっと照らしてくれる語り部のよ

うな人でしたとたくさんの方が語っておられます。また「楽しめば得」ということも多く

のディレクターさんなどに伝えてらしたようで、「天野さんだったらなんて言うかな?と

思うことがよくあってと。もっと大真面目にふざけなきゃダメだよ」の言葉にひゃーっと

頭が真っ白になった。見透かされたと感じましたと述べてらっしゃいます。広告は風景を

変える。人の顔を変える。若い人の顔が小さくなったのは広告のせいだ。「消費者の立場

に立って」とか「生活者の目線で」といった言葉を、調子のいいうたい文句としてではな

く。言葉を過小評価してはいけない。言葉は時に人に希望を与え、その物事をよい方向に

変えると書き留めたノートにあったそうです。成長から成熟へ。もっともっと言葉を大切

にして別品の国を目指したいものです。