健康と歯科医療

禁煙支援イントロダクション

2001年大阪で国立予防科学院の望月真弓先生 産婦人科の三條先生から喫煙の健康被害を伺い、夜中のTV 「サイエンスアイ」でカナダのショッキングなタバコのパッケージを見て以来、これは歯科として、歯周病予防の為にも、禁煙への取り組みはさけては通れないと決意しました。 時を同じく身内に癌になったものがおり、本人は喫煙せずとも、あきらかに受動喫煙が考えられたので、なお更禁煙サポートに拍車がかかりました。 しかし当時は、禁煙「指導」と言う言葉のとおり、Do Notばかり言っておりましたので、あたたかく、伴走する、現在の禁煙サポートとはほど遠いものでした。熱意ばかりで勉強不足でした。 知己を得て、カナダのタバコパッケージを手に入れ、診療室で患者さん方にみて頂くと、皆さん一様にびっくりなさり、「えっ、これタバコなの?」「こんなリアルに。これじゃ吸わないよね。買うの勇気いるもんね!」「日本のタバコはなにも言わないものね」 縁あって、聖路加国際病院の教育医療に「歯科医院の現場から」と題して、拙文が掲載されました。かなり反響がありました。 この度ホームページに禁煙のコーナーができましたので、この掲載された「タバコのリスク」をイントロダクションと致します。 今後も皆さんのお口の健康を守り、きれいな空気のため、また子供達の防煙の為に、お伝えしてまいります。

タバコのリスク

これまで、歯は年齢とともに失ってあたりまえという考えが多数でした。「一本くらい残すなら全部抜いて総入れ歯にしたほうがいいよ」なんて乱暴な意見が今でも歯科医の中にはあります。でも、歯1本1本を手や指と同じように考えたら、そんなおろそかなことはいえません。最近、虫歯も歯周病も細菌の感染症であり、それに個々の生活習慣、リスクが加わって、発症したり症状を進めたりするということがわかってきました。ですから、コントロール、予防ができるのです。

今回は、生活習慣とも大きく関わり、なかなかやめられないタバコと口腔内の関係についてお話ししようと思います。

喫煙者のお口の中は

よく喫煙者のご家族が来院なさると、「壁やカーテンがすごく汚れるのよ」とおっしゃいます。その方のお体はいかがなのでしょうか。

まず喫煙者はいらした途端、そのタバコ臭でわかりますが、歯茎もやせて生気がなく、黒ずんでいます。健康な歯茎はうすいピンク色です。お顔色も悪い方が多く、歯茎の診査をすると、歯周病の進んでいる方が多いようです。タバコの影響を受けるのは内臓だけではないのです。お口は入り口ですから。歯の表面はもちろんヤニだらけ。でも気になるのは舌(ベロ)のほうです。舌苔もついて、みるからに様子が変わっています。そのためでしょうか。濃い味を好まれる方が多いとお見受けいたします.今わかっている重大なことは、タバコが歯周病を悪化させる最大のリスクだということです。

口腔内写真、レントゲン写真をとると汚れとともに表からでは見えない歯周病の進行が確認されます。タバコは免疫や血流に影響して健康に悪いことは知られていますが、歯茎の炎症を隠し出血を抑えるため、患者さんも歯科医院側も見過ごすことがあり、気づかないうちに進行して重度の歯周病になることが多いのです。このようにタバコと歯周病の関係が明らかになってまいりましたので、診断には喫煙習慣や本数、年数を伺うことが欠かせない時代になりここ数年、若年者や女性の喫煙も増えております。全身だけでなく、口腔内へも大きなリスクがあることをお知らせして、禁煙、防煙を促していかなけれぱ、と痛感しております。

禁煙先進国の取り組み

肺ガンだけではなく、寝ている赤ちゃん、周りへの副流煙(受動煙)、母体への影響、子供たちへの防煙。そして、今お話しした歯周病の大きなリスクであること、口腔ガン、歯がなくなっちゃうよ……と警告しています。WHOの調査では、年間400万入が、タバコが原因で亡くなっており、近いうちに1000万入になる、これは疫病だとも(平成12年11月26日NHK「サイエンスアイ」より)。

今年の5月には欧州議会(EU)でタバコ規制法が成立し、「ライト」「マイルド」などの名称が追放され、パッケージの表の面積の30%、裏の面積の40%以上に警告文の掲載が義務づけられました。日本ではこうした事実、はっきりと危険性をうたうことがなかなかむずかしく、もどかしいのですが、海外では明確な警告表示になっているのです。

欧州議会 タバコ

楽しみであったり、嗜好品であるタバコをやめることは大変なことのようですが、リスクをきちんと伝え、医療者が心を寄せてサポートしなくてはなりません。歯科医院でも、単に虫歯、歯周病を治療するだけでなく、おひとりおひとりの口腔内の状況を把握して対応し、大きなリスク因子であるタバコについても、積極的に取り組もうとする動きが出ております。

「新老入」の年齢に達しても、いつまでもご自分の歯でおいしく召し上がって元気に活躍され、大いに笑い、おしゃべりを楽しんで愉快に過ごしていただきたいと思います。

教育医療Vol.27 No.7(2001)
投稿 中央歯科クリニック 奥富恵美子