対話する医療

「医療のAI化が進む現代では、患者さんとの対話がより重要になる」孫大輔先生と言う方の本から抜粋です。

2000年代に入ってから、医学教育にコミュニケーションが本格的に導入され、OSCEと言うロールプレー二ングによる実技試験も行われ、一定レベルに到達しないと進級できず、ようやくコミュニケション能力が重視される時代になりました。

こうしたコミュニケーション教育がなされる前と後の世代では、患者さんや医療スタッフへの接し方や基本的なマナーが明らかに違うと言う声が現場から数多く上がっていて、教育の効果が再認識されているようです。

元々日本の医学は実験医学を中心としてきたため、コミュニケーション教育はなく、もっと早くコミュニケーションを学んでいれば、患者さんにより的確に接することが出来たのに・・とこの孫先生でも思われているそうで、学んでいれば、患者さんが何を求めていて、どういう対応が適切なのかを考えられた・・と振り返られています。

今後の医療について、患者さんと医師の関係性がよりフラットに近づいて行くと述べておられます。両者の関係は、昔は医師が良いと考える治療法を一方的に伝えるパターナリスティック・モデルでしたが、その後、患者さんに情報を提供して、詳しく説明するインフォームド・モデルなどが提唱されてきました。今後は、患者さんと医師が対等の立場でお互いの考えを理解しあう形の、デリベラティブ・モデルが潮流となると仰っておられます。

かつて医師は地域コミュニケーションの中に溶け込み、病気を治すだけでなく患者さん一人一人と対話し、病気を抱えながらもより良く生きていくのを支えていましたが、医療の高度化とともに医師は病院に集約されていきました。

しかしこれからは先進医療をAIで行うような時代です。本来医師に求められていた「人が人を診る」部分が、改めて大事になってくると孫先生は述べておられ、人のつながりが健康に及ぼす影響・患者さんの立場から見た理想の医師像・共感力による治療効果などにも言及しています。